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『リンさんの小さな子』

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  図書館のフランス文学のコーナーを見ていて気になった一冊、フィリップ クローデル著『リンさんの小さな子』。

 あらすじは書かれていなかったけれど、このシンプルで静かな装丁に魅かれて、初めてフィリップ クローデル氏の書いた本を手に取りました。どうやら、イラストも本人によるもののよう。
 そして昨日、字の大きさや本の厚さからして電車にちょうどいいと思って持って出掛けました。

 読み始めてみると、少し違うけれど、私の好きなアゴタ クリストフの描く様な背景や雰囲気。
 戦争が奪った普通の暮らし、その状況は痛いほどに伝わってくるのに、主人公をはじめ全体に流れているのは、静かでで淡々と、どこか客観的で澄んでいる。

 難しい文章は一つもなく、まるで絵本に書かれているような文体。電車の往復でちょうど読み終わるだろうと思っていたけれど、行きの電車で読み終わってしまった。
 大変だったのは、途切れること無く読めたお陰もあってか、この物語の世界に入ってしまい、涙が出てきそうになったこと。気分を変えようと顔を上げようにもあげられない。
 気持ちを落ち着かせようと読んだ解説でもまた感慨深くなるようなことが書かれてあって、読み終わるまでは電車に乗っていたいと思っていたのに、急に目的地が待ち遠しくなる始末。
 ゆっくりと家で読めば良かった。

 フィリップ クローデル氏はこの本より前の、いくつかの賞をとりフランスでベストセラーとなった『灰色の魂』という作品があるのだそう。ただこの2つの文体は大きく違うとのこと。
 
 そちらも近いうちに読んでみたい。
 

by emioohara | 2007-06-24 22:00 | hon